うんこを踏んでしまった私の悲哀とその対処。20年ぶりの邂逅。
そう
年をとってから踏むうんこはつらい
その日、めずらしく遅くまで仕事をしていた私は、すでに真っ暗な中、家路を急いでいた。 自転車で通勤していた私が、家に着くまでに地面に足をついたのはわずか3回。 足の裏に違和感をおぼえながら、玄関にたどり着いたのである。
家に入った瞬間、違和感は確信へと変わった。
なぜなら、否定しようがないほどうんこ臭かったのである。
恐る恐る足の裏を覗いてみる。
もう間違いない!
うんこだ!
もしこれが、仕事帰りで疲れていなかったら、「うんこ踏んじまったぜ、はは!」と笑い飛ばせもしただろう。 もしこの日、妻がたまたま仕事で留守にしていたなんてことがなければ、「いや〜うんこ踏んじゃったよ、はは!」と笑い話にもできたであろう。
もしこれが、小学生だったあの日の通学路での出来事であったら、栄誉ある「うんこまん」の名を戴きヒーローになっていただろう。
しかし運命は残酷である。 仕事帰りで疲労困憊。妻は留守。ましてや小学生どころかしなびたおっさんである。 私はこの日、うんこを踏んだという悲哀を一身で受け止めねばならなかったのである。
なかなか落ちないうんこへの対処
さて、とはいえ異臭をはなつうんこをいつまでも家の中に在中させておくわけにもいかない。 ひとまず冷静になりうんこへの対処を考えるのであった。
草にこすり付ける
幸いにしてクソ田舎。周りにこすりつけるべき草むらはいくらでもある。 草にこすりつけて落とせば、何のことはない。平和な日常への帰還である。
だがしかし、である。
どうしてなかなかうんこは落ちない。 いや、当然ながら大部分は落ちたのである。9割は落ちた。が、残りの1割が落ちない。 薄暗い外灯のもとではらちがあかない。
止むを得ず、家の中で決着をつけることにしたのであった。
水で濡らしたティッシュで拭き取る
できればうんこには上半身はできるだけ近づきたくないのが人間のサガであるが、そうも言ってはいられない。 意を決して直接対決である。 機転を利かせた私は、水で濡らしたティッシュでうんこに挑むことにした。まさかこの世に水で濡らしたティッシュに対抗できるうんこはあるまい。
だがしかし、である。
落ちない。 いや、99%は落ちている。むしろ100%と言っていいほど落ちている。 しかしながら、どうしようもなくうんこくさいのである。
自分のうんこならまだしも、どこの野良猫とも野良犬とも知れぬ輩のうんこのニオイが自宅の玄関に充満しているというのは、この上なく不愉快であり苦痛である。 覚悟を決めうんこへの徹底交戦を試みる。
アルコールで拭き取る
ここで、奥の手とも言える万能平気アルコールスプレーの使用を決意。水で落としきれないこびりついた細菌どもも、アルコールの手にかかれば全滅必死。 ライオンはウサギを狩るにも全力をつくすというが、まさにそんな気分だ。
しかし落ちない!
このうんこは一体私にどうしろというのだ
【敗因】アロマでごまかす
フランス人はめったに風呂に入らないと聞いたことがある。 乾燥した気候のため汗をかかないとかいう理由だった気がする。 そして、香水で体臭をごまかすからとも聞いたことがある。
もはや最終手段である。 毒をもって毒を制す。 臭いには匂い。
アロマの爽やかハーブな香りで上書きを試みる。 水とアルコールで弱っているうんこになら攻め切れるはずだ!はずだ!はずだった。
お察しのとおり、この行為がうんこに対しての決定的な敗因となってしまったのであった。 アロマによる効果はうんこへの上書きではなく、融合であった。
アロマともうんことも取れぬアロマうんこの香りは決して良い匂いとは言えず、 打つ手をなくした私は、「風化して匂いが消滅するのを待つ」というほぼ敗北に等しい手段をとらざるを得ず、我が家の玄関はしばらく異臭に包まれることになったのであった。
【言い訳】水道で洗えば?という意見について
確かにもっともな意見である。しかし、この方法をとらなかった理由は2つある。 一つは、アパートには外に水道が設置されていないこと 一つは、玄関より内側にうんこのついた靴を持ち込みたくなかったこと。ましてや室内の水道で洗うなどもってのほかだ!うんこの微粒子が部屋の中に残ったらどうする!
反省。私はどうすべきだったのか
まず、うんこを踏んだ時点で敗北なので、踏まないことが大前提である。 たかがうんこを踏んだくらいで、ここ1ヶ月近く引きずるとは思わなかったぜちくしょう。 うんこがありそうなところには近づかない。 これしかないだろ。もう。
以上をもって、うんこを踏んだ私への慰めとするとともに、
うんこによって汚された心の禊とする。
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