結婚してからの妻の人生が、なんか申し訳ない

結婚して早10年が過ぎようとしていた。

普段おもしろおかしい妻の生態を紹介しているが、改めて彼女の人生を振り返ると、なんだか申し訳ない気持ちになる。

10年もあれば、どの夫婦も色々なできごとがあると思うが、それにしても山あり谷ありな生活だったように思う。


私 私(夫)
サラリーマン。一見マジメそうだが、中身は怠惰。

妻
結婚して東京から長野県にやってくる。いつも苦しんでいる。

結婚直前に病気でぶっ倒れる夫

山あり谷ありのスタートは、結婚前にさかのぼる。

数か月先に結婚を控えたある日、私は病気でぶっ倒れた。 比喩ではなく本当にぶっ倒れた。

そのまま入院、手術、リハビリ。

当然結婚は延期された。

幸い二人とも結婚式というものに興味がなかったので、それに伴うアレコレ面倒なことはなかった。 とは言え人生の大きなイベントに水を差したのは間違いなく、我々の結婚生活はバラ色の新婚生活ではなく暗雲立ち込める不穏な空気のなかスタートしたのであった。

結婚生活は多難であった。 私は体調が本調子ではなく、半日働いて半日寝ているような半分病人のような状態で、彼女は妻と言うより介護人のような状態だ。

当時住んでいたのはけっこうな田舎で(今もだけど)、職もなければ遊びもない。 ずっと東京で暮らしてきた彼女を、私はとんでもない監獄に呼び寄せてしまったのかもしれないのであった。

新婚なのに「仕事辞めてデザイナーになる」と言い出す夫

そんな中、結婚して1年も経たずに私は仕事をやめた。 地元の金融機関に新卒で入社し、すぐに「あ、これは無理だ」と感じつつ騙し騙し働いてきたが、いよいよ無理となったのだ。

ウェブデザイナーになることを目指し、勉強に専念するために仕事をやめた。 仕事がイヤで出社前に過呼吸になったりもしたので、妻としては逆にホッとしたらしい。

とはいえ、学生時代に特に勉強していたわけでもな未経験の分野に独学で転職チャレンジをしようというのだから、はたから見たらただのバカである。そんな様子を一番間近で見ていたのだから、さぞかしヒヤヒヤしたことだろう。

ともかく、退職とともに引越しをして、新しい生活を始めることになったのだった。

そして始まる貧乏暮らし

仕事をやめてから半年ほど経ったころだったろうか、私はなんとか小さな事務所に就職することができた。

半分は勉強させてもらう形での仕事だったので、給料は激安。 当時住んでいたアパートの家賃は約5万円。手取りが約11万円だったので、だいたい給料の半分が家賃で消し飛ぶことになる。

妻がアルバイトをしてくれていたおかげで何とか暮らしていける状態だった。 あれだけ車の運転が苦手だった妻が、毎日片道40分かけて山道をアルバイト先まで自動車通勤した。 (ちなみに年収が200万円台だと、税金や保険料は驚くほど安い。)

週末にスーパーで買うお菓子がたまのぜいたくで、よくアルフォートを食べた。 あれは良い。チョコが甘くてビスケットでお腹がふくれる。まさに貧乏の友。 鶏のもも肉は高くて買えないので、むね肉ばかり食べていた気がする。

交通費の節約もかねて40分かけて駅まで歩いたりもしていた。 まともな旅行にいった記憶もない。

そんな生活が4年ほど続いた。

とうとうキレる妻

そんなある日、妻がブチ切れた。 もうすぐ30歳になるのに、こんな給料でどうするのか。一生この暮らしを続けるのか。将来のことをどう考えているのか。

そのときの状況を考えれば、あたりまえの不安をぶつけてきた。 お金の不安をつぶやくことはあっても、あまり私の仕事に口を出してこなかった妻だが、心の中ではかなり心配だったに違いない。

思い返せば結婚してからずっと、安心できるタイミングなどなかったはずだ。 いっぽうの夫は根拠のない自信にあふれ、そのうちビッグになるとか言っている。そりゃ堪忍袋の緒も切れるというものである。

妻の様子をみて少なからず改心した私は、転職活動をして多少は安定して給料がもらえる会社に勤めることになったのであった。

はたして申し訳のある生活は訪れるか

しかし人生とはままならぬものである。 (私が言っているのを妻が聞いたらまたキレるかもしれない)

すこし安定した暮らしができるようになったかと思えば、今度は退屈が彼女を支配している。住んでいるのは周りに遊ぶところも何もない田舎。しかも隣は私の実家。何かやるにも窮屈極まりない。

閉塞感と停滞感がただようこの場所で、果たしてこの先の夫婦生活はどうなっていくのか。妻に安息の日は訪れるのか。

ノー天気だけが取り柄の私だが、これまでの暮らしと今の状況に少しあせっている。

おわり

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